ブルームバーグ市長の提案するユニークな福祉プログラム。今年の春先くらいから話題を耳にしてましたが、少しずつ注目度がアップしてきました。
どんなプログラムかというと、「
貧困層の人々が"良い行動"をした場合にお金を与える」プログラム。
例えば、子どもがちゃんと授業に出席していれば25ドル、図書館を利用するためのライブラリー・カードを作ったら50ドル、病院のアポイントメントを守ったら100ドル、というように、"良い行動"に対してお金(=インセンティブ)を与えるというのです。ブルームバーグ市長いわく、
「裕福な人たち(=企業経営者など)がもっと頑張ろうと思えるインセンティブ(税控除や補助金)は世の中に沢山ありますが、貧しい人たちに対するインセンティブはありません。生活に困窮する家庭の子どもは、普通に学校に行くことさえ難しい状況にいるのです。極めて優秀でなくても、日常生活の中で"良い行動"をすれば"良いこと"があるというインセンティブを与える。これまでの福祉では貧困を撲滅できなかった。新しいアイデアが必要なのです。」
そして、ブルームバーグ市長は、このプログラムのために必要な財源をニューヨーク市の予算からではなく、プライベートのファンドから拠出すると言うのです。その総額は53百万ドルほどの予定。もちろん、ブルームバーグ市長も私財から資金を出します。
この提案に対して反対する声も出ています。その多くは、
「本来もっと努力をしなければいけない状況にいる人々に、たやすくお金を与えていいのか!かえって貧困から抜け出せなくなるのではないか!」
というような内容。確かに一理あるかも、と思わなくもないですが、しかし、ブルームバーグ市長のこれまでの政策を見てみると、このプログラムの目的がもっとよく分かってきます。例えばフードスタンプの配給期間延長の取りやめ、とか。
昨年の春、ブルームバーグ市長は健常者へのフードスタンプの配給期間延長を取りやめました。フードスタンプとは、失業者への福祉政策の1つ。お金がなくてもこのフードスタンプを使ってスーパーなどで食品を購入できます。
その際、ブルームバーグ市長が言ったのは「働けるニューヨーカーは働くべきだ!」。福祉政策に対して敏感な人々からは「条件が悪かったり、安い賃金の仕事でもしなくちゃいけなくなったじゃないか!」などと非難もでました。
要するにブルームバーグさんは、真剣に貧しい方々を救いたいんだと思います。失業者に一律にフードスタンプを配った方が役所は楽です。一律だったら、仕事しなくていいわけですから。でもそれじゃ、ちゃんと働いたら良い暮らしができる人々も貧困から抜け出すキッカケを得られません。しかも、フードスタンプをいくら配っても、貧困から抜け出そうというインセンティブにはならない・・・、ですよね?多分、ブルームバーグさんは、「それでは本当の意味での社会福祉ではなく、それこそ貧困層を切り捨てているだけになってしまう」と思ったのかも。
また、このプログラムが提案されたのは単なる思い付きではありません。どんなに些細なものでも"良い行動"をすることが、貧しい家庭の、特に子ども達にとってはどれほど大変なことかを、ブルームバーグさんは実際に貧困層のご家庭を訪問して知ったそうです。成功するかどうかはまだ分からないけれど、貧困層、富裕層と分けるのではなく、同じ人間として受け止め、真剣に考えたからこそのプログラムって感じかなと思いました。
〔ご参考情報〕
・
Opportunity NYC:このプログラムのファンドの正式名
今回ブルームバーグさんは私財を使ってこのプログラムを立ち上げようとしていますが、この他にも名前を表に出さずに多額の寄付を各所で行ってます。確か、市長のお給料ももらってなかったはず。活発な一連の社会貢献活動もあってか、「大統領選挙に出ないのですか?」とマスコミに頻繁に質問されてますが、彼の答えはいつも同じで、NO!その理由は、"I've got the best job in the world"(「私は(ニューヨーク市長という)世界で最高の仕事を得ていますからね」)。
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