2007年第1週目のニューヨークは、「英雄たちの週」(”Week of Heroes”)。5日金曜日、AM New Yorkの一面を飾ったのは2件の勇敢なニューヨーク市民のお話。
地下鉄ホームから線路に落ちた人を助けた方、アパートの窓から落っこちた赤ちゃんをキャッチした方・・・。取材を受けた警察トップが、「今週は英雄たちの週だね!」と言ったほど。特に、地下鉄で線路に落ちた人(Cameron Hollopeter さん、20歳)を助けた男性(Wesley Autreyさん、50歳)は、現在、ブルンバーグ市長から栄誉市民賞を授与されたり、人気テレビ・トークショーにゲスト出演するなど大注目されてます。
何があったか少しご説明しますね。年明け早々、1月3日のお昼頃のお話です。4歳と6歳のお嬢さん2人を連れてホームで待っていたAutreyさんは、ホームから線路に落ちたままよじ登って来れないHolloperさんを見つけました。これ、今まさに電車が入ってくる直前の出来事だったそうです!
"I had to make a split decision"
(すぐに決断しなきゃいけなかったんです。)
Autreyさんはその時の心境をこう回想しています。でも、50歳の年齢で、どこかへ向かう途中で、幼いお嬢さん2人を連れていて、っていうか、電車が突っ込んできて!、一体どれくらいの人々が見ず知らずの人のために実際に飛び込んで助けようなんて考えるのでしょうか。
結局、飛び込んだAutreyさんは線路と線路の間でHollopeterさんの上に覆いかぶさり、ブレーキをかけたものの急停車できなかった電車がその上を5両ほど通過しました。鳴り響く急ブレーキの音と悲鳴の中、怪我もなく無事だったAutreyさんが最初に思ったのは、「娘たちが心配してるから早くここから出なくちゃ・・・。」
無事に車両の下から出てきたAutreyさんを迎えたのは大きな歓声と拍手。大歓声と大拍手です。この勇敢な人命救助のストーリーはあっという間にメディアに取り上げられ、地下鉄工事の作業員が本業のAutreyさんは近所の子ども達からスーパー・ヒーローと呼ばれるようになりました。MTA(都市交通局)はAutreyさんに1年間の乗り放題メトロカードを、そしてあのドナルド・トランプからも1万ドルをプレゼントされることが決まったそうです。でも、Autreyさん本人はいたって変わらず、こう話しています。
“I don’t feel like I did something spectacular. I just saw someone who needed help. I did what I felt was right.”
(何か素晴らしいことをしたなんて気はしません。ただ、助けを必要としている人を見ただけで、私は自分が正しいと感じたことをしたまでです。)
〔追記〕
Wesley Autreyさんは、この後、当時のブッシュ大統領による米国議会での年初演説(2007 State of the Union Address)にも招かれその功績を称えられたほか、2007年の雑誌Timeが選ぶ「世界で最も影響力の強い100人」(
the 2007 Time 100 most influential people in the world)にも選ばれ、その記事は、あのドナルド・トランプ氏が書いてます。さらに、Wikipediaにも
Wesley Autreyさんの紹介ページが作られてるという状況です。
アメリカの子ども達が将来なりたいと憧れる職業の第一位って何かご存知ですか?スポーツ選手ではありません、消防士さんなのです。Autreyさんに対するこちらの人々の反応を知れば知るほど、自分の命をかけて誰かを守る人々のことを心から尊敬し、称えるという文化の底力を感じます。経済的に見ればアメリカは日本よりもずっと格差の大きな社会ですが、物質的な豊かさに関係なく社会を構成する一人一人が持つ善意や志の高さといったものが、社会全体の価値判断に大きな影響を与えている気がしてなりません。
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