米国最大規模の小売業界の展示会、『NRF Retail Big Show 2023』特集。
今年のNRFでは、実店舗の重要性について語られている講演が多く、早朝から行われたこの基調講演:
…もその1つ。
ニューヨークに本社があり、うちのブログではお馴染みの老舗デパートのメイシーズ(Macy’s)やブルーミングデールス(Bloomingdale’s)の親会社で、さらに、最近は美容品オタク向け専門店「ブルーマーキュリー」(Bluemercury、2015年買収 )の親会社でもあるメイシーズ・インク(Macy’s, Inc.、元Federated Department Stores, Inc. )の会長兼CEO…、要するに、めちゃめちゃ偉い人のジェフ・ジェネット(Jeff Gennette)さんが登壇された講演です。
こういうめちゃめちゃ偉い人から、生で、直接、お話をお伺いできるのは、とても貴重で、刺激的。考え方とかモノの見方とかから、いわゆる『アハ!体験』、「なるほど、そういうことか」と気づかされることも、多々、あるのですが、この講演は、まさにそんな内容でした。
例えば、ジェネットさん曰く:
”コロナ禍の2020年初頭、メイシーズでは店舗が閉鎖され収益は停滞し、明確な終わりが見えない中、現金の保全が最優先され社員の9割を一時解雇するという苦渋の決断に至ったが、そんな危機を乗り越えて、メイシーズ社は、現在、デジタル戦略に力を入れていて、データ・サイエンス、アロケーション・サイエンス、プライシング・サイエンスに非常に優れた企業へと変貌を遂げつつある…”
うーむ。これ、今年のNRFで本当によく見聞きしたのですが、もはや、『小売業はデータ・サイエンスの会社』と言っていいのかも?
そのくらい、あちこち、そこらじゅうでデータの重要性が語られてます。背景には、コロナ禍に起こった『3か月に10年分進んだ』デジタル・トランスフォーメーションの急激な進化や普及があるのでしょう。
小売業側だけでなく、消費者サイドにおいてもデジタル・トランスフォーメーションが進み、普及した結果、これまで得難かったデータも手軽に、当然のように得られるようになり、そのデータを活用することで、小売業界に革命的な効率化や収益アップの機会をもたらしている、という流れみたい。
また、ジェネットさんは:
”小売店舗、オンライン店舗、モバイル・アプリ、通販カタログ、コールセンター…等々、マルチチャンネルでの商品の販売実績、顧客の購買行動傾向、在庫状況などのデータを地域別に比較・分析して、経営環境の改善の機会を常に伺い、進めている”
…とのこと。
米国では、マルチチャンネルで購入する消費者は、店舗だけで購入する消費者よりも、よりロイヤリティが高く、より多くのお金を使うと考えられております。
で、メイシーズでは、店舗だけでなく、Eコマースや通販などのマルチチャンネルでの販売実績データを、地域別に比較、分析し、よりマルチチャンネルでの売り上げが高い地域に実店舗を出店する、という戦略を打ち出したとのこと。大きな商品は店舗を訪れずにEコマースで購入する消費者が多いと推察されるため、従来のメイシーズの大型店舗ではなく、これまでにない形式の小型店舗も可能になりました。また、たとえ店舗での売り上げがそこそこ良くても、マルチチャンネルで比較した場合の販売実績が悪い地域の店舗は、成長力が乏しいと判断し、閉店することで経営効率を高めたそうです。
〔ご参考〕
【NRF Retail Big Show 2023特集】
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