一昨年の2020年、コロナ禍の影響で史上初めてオンラインのみで開催されてから、毎年、リモート参加してます世界最大のデジタル技術見本市「CES」。
今年は、先週1月5日~8日(メディア向けは3日から)にラスベガスで無事に開催。ほぼ昨年2021年と
同様、事前登録しておけば、一部のカンファレンスや基調講演、会場ツアーなど(どれもだいたい30分~1時間ほど)、リモートでもストリーミング動画を通じてバーチャル参加できる仕組みになっておりますので、今年も参加してみました。
いやー、やっぱり世界最大のデジタル技術見本市だけありまして、CESって、とても面白いのです。
まずは、最新のテック・トレンドを、一応、ざっとお伝えしたいので、CES初日、一番最初に催される毎年恒例のCES主催者であるCTA(Consumer Technology Associationの略語)による最新のテック・トレンドについてのカンファレンス:
のポイントを、数回にわけて、まとめてみます。
まず、今年のCESの大きなテーマは、上のスライドの通り、”Global Challenges Conftonting Industry”(産業界が挑むグローバルな課題)。
そうです、今、私たちはマジでヤバい『世界の危機』に直面している、というのですよー。
このスライドには書かれておりませんが、その『世界の危機』には、もちろん、ロシアによるウクライナ侵攻(ウクライナ戦争)や、様々な自然災害や新型コロナウィルスのような疫病、さらに、それらによる世界的なサプライ・チェーン(流通)の混乱、歴史的なインフレや食料品不足、主にヨーロッパ諸国でのエネルギー不足等々…。
いつの間にか、世界はかなり危機的な状況に陥っていて、でも、だからこそ、人類が生き残るために、新しい技術や科学が、イノベーション(革新)が追求されているのです…とのこと。
なんか、すごい壮大なお話になってます。
もとのスライドには詳しく書いてありませんが、各種報道、例えば、以下の経済紙フォーブスの記事:
によりますと、
...the American Trucking Association estimates that 80,000 more drivers are needed to make up a shortage in America this year and a shortfall of 160,000 truckers will exist by 2030.
アメリカトラック協会は、今年アメリカで不足するドライバーを補うために8万人以上が必要で、2030年には16万人のトラック運転手が不足すると推定しています。
…とのことで、かなりヤバい状況。
そして、これでますます昨年のCESで取り上げた長距離トラック専門の自動運転車を作ってるトゥシンプル(TuSimple) の役割が重要になってくるんじゃないのかな…と思ったんですけど、なんと、そのトゥシンプル(TuSimple)に思いもよらない出来事が起こっているのです。
これ、長くなるので、次回というか、このカンファレンスのご案内が終わったら書きますね。
話を戻して、「CES 2023の注目すべきテック・トレンド」(CES 2023 Tech Trens To Watch)。
過去の不況期にも新しいイノベーションが生まれて、その後の世界を変えていったということで、2008~2009年にあったThe Great Recession(大不況)期と現在を、以下のように比較:

2008~2009年にあったThe Great Recession(大不況)期では、主に、4G接続、スマートフォンなどの消費者向けのテクノロジーにおいてイノベーションが起こったのに対し、
現在は、企業(産業)向けのテクノロジーにイノベーションが起こりつつある、との指摘。
このイノベーションがもたらすものは、とてつもなく大きく、これまでの業界のビジネス・モデルや、さらに大きな社会の仕組みを変えてしまう可能性すらあるでしょう。
いくつか具体的に挙げられている技術も、2008~2009年にあったThe Great Recession(大不況)期のものと比べると、はるかに規模も影響力も大きいことが一目でお分かり頂けるでしょう。
例えば、以下のようなものです:
5G - Industrial IoT Application
5Gより先の技術、例えば、地球の周りに3,326基もの低地球軌道(LEO)衛星を打ち上げ、衛星経由の高速インターネットを提供するAmazonによる「カイパー計画」(Project Kuiper、2023年に最初の衛星を打ち上げ予定)や、クアルコム(Qualcomm)による次世代Wi-Fi、Wi-Fi 7 Immersive Home Platforms 等についてのセッションもあります:
ちなみに、なぜ「カイパー計画」と呼ばれるのかというと、海王星の軌道の外側にある氷の領域「カイパーベルト」に由来し、惑星科学者のジェラール・カイパーにちなんで命名されたから(出典:
PCマガジンのオンライン百科事典)
Connected Intelligence(コネクテッド・インテリジェンス)
直訳すると「つながっている知識」。
まずは、その名のとおり、クラウドと人工知能に関するテクノロジー全般を意味し、当然のことながら「つながっている」(コネクトされている)から可能になる『リモート〇〇』、例えば、遠隔診療(Telemedicine)、リモート・ワーク、リモート学習、リモート・ジムや習い事等々も含む。
さらに、リアルタイムにコネクトされていることで意味が高まるものに、デジタル・ツインなどもある。
Autonomous System(自動・自律システム)
その名のとおり、自動運転モビリティや、自動制御されるロボットを含む技術。
パっと関連するものを挙げてみても、農業(昨年も取り上げたJohn Deereが、今年もCESで大注目)、建設業(John Deereはショベルカーなどでも有名、その他、大手のCaterpillarや、昨年取り上げたBobcatなど)、自動車産業、シャトル・バスからの都市交通、長距離輸送トラックからのサプライ・チェーン、ラストマイル配送、倉庫業、工場(スマート・ファクトリー)、その他陸上での各種自動化のほか、船舶などの海、飛行機・ドローンなどの空での自動化、等々が含まれます。
Quantum Computing(量子コンピューター)
これらの最新テクノロジー、イノベーションがこんな感じのスケジュール感で実現していくとの予測
いろいろな分け方で説明してくれてますそれだけ、様々なテクノロジーやイノベーションがあるよ、ということ
『ロジスティクスと倉庫』の自動化だけでもスピード、安全性、収益性の3分野で様々なイノベーションが生まれておりまして、その業界の仕組みを根底から変えつつあるのです
『サイバーセキュリティ』だけでも、最新テクノロジーやイノベーションは山盛りで、しかも、そのエコシステム(関連領域)は拡大中
そして、メタバース…
Meta社のせいで、今やまともなビジネス・パーソンの間では、もっぱら胡散臭い印象になってしまった「メタバース」について、CTAなりに情報を整理してくれてますが、その内容はイマイチ。
いろいろ見てきて1つ言えるのは、リアルの世界で価値があるものをベースにして、何かしらバーチャル化した世界でも、そのもともとの価値をさらに高めることのできるテクノロジーかどうかで、その「メタバース」と呼ばれているもの(それが何であっても)の良し悪しを評価するのが、現状、一番良い付きメタバースとの付き合い方だと思います。
また、リアルの世界で価値があるものをベースにして、何かしらバーチャル化した世界でも、そのもともとの価値をさらに高めることのできるテクノジーの多くは、「メタバース」という言葉を使わない、さらには、あえてその言葉を避ける傾向があるように感じられます。
これについては、昨年のCESのソニーのカンファレンスがまさにそうでしたし、昨年10月12日にオンライン開催されました『2022 エマーソン・インダストリアル・デー』(2022 Emerson Industry Day)の目玉講演の1つ、ニューヨーク大学大学院教授で人気ビジネス書作家、そして、シリアル・アントレプレナー(連続起業家)で投資家のスコット・ギャロウェイ(Scott Galloway)さんがその講演内でも、まったく同じ指摘をしているのをこのブログでもご紹介しました:
こういうメタバースはたぶん失敗しますこれでは店員が出てくる意味が感じられません
香りをバーチャル体験できるテクノロジー、こういうメタバースなら成功するかもしれません
リアルの世界で価値があるものをベースにして、何かしらバーチャル化した世界でも、そのもともとの価値をさらに高めることのできるテクノロジーかどうか
で評価してみると、なんとなく分かりませんか?
なお、OVR Technologyのカンファレンスは:
一応、CTAなりにメタバースが可能なビジネス領域やテクノロジーの種類などを、こんな感じで、できる限り分かりやすく分類してくれておりますが、そもそも「メタバース」自体に価値がないため、あまり役に立たなさそうです
そして、今年、史上最多の展示がおこなわれているトランスポーテーション関連の3つのポイント
史上初めて「ソニーが自動車会社(Sony Mobility Inc.)を作ると発表」した昨年のCESで、
”You know, it's kind of become an auto show in a lot of respect. ”
『(CESというより)多くの点でオート・ショーになってる』
との声が出ているとお伝えしましたが、今年のCESには、昨年を上回る数の自動車、船舶、飛行機やドローン関連の展示が行われまして、特に、電化や自動化に関わるテクノロジーのコアの部分(バッテリー、センサー、カメラ、AI、半導体等々)については、もはやそれが車でも、シャトルバスでも、トラックでも、工事現場用ショベルカーでも、農業用トラクターでも、船やボートでも、飛行機やドローンでも、そんなに大差なくなってきておりまして、ぜんぶひっくるめて『モビリティ』(Mobility)という呼び方を、あちこちのカンファレンスで見聞きするようになって参りました。
また、そうなると、もはやCESは、普通のオート・ショーの何倍も大きな『モビリティ』ショーになっていくかもしれません。
それはもう、めちゃめちゃ広範なテクノロジーの領域をカバーしておりまして、ワケが分からなくなりそうですが、一応、上のスライドのように、CTAは、この分野の技術を以下の3つに分けてくれてます。
1. EVs and the Evolution of the Electrification Ecosystem
電気自動車と電化関連エコシステム
2. Advancement of Autonomous Systems and Applications
さらに進んだ自動システムと関連技術
3. Transformation of the in-Vehicle Experience
車内体験を変える技術(内装、スクリーン、音響ほか)
今年から取り上げるようになったTransformation of the in-Vehicle Experience
車内体験を変える技術(内装、スクリーン、音響ほか)

新しい話題なので、一応、詳しく説明してくれてます

その他、トランスポーテーション関連には
イノベーションがいっぱい

オススメの講演を2つ、こんな感じで教えてくれました:
これ以外にも山ほど面白いトランスポーテーション関連の講演あります
だいぶ長くなったので、「CES 2023の注目すべきテック・トレンド」(CES 2023 Tech Trens To Watch)の続きは次回へ
1/25 追記:CES史上初のテーマについて
今年のCESは、コロナ禍後で初、パンデミックと共存する世界で初、というだけではなく、CESの歴史上で初めて「テーマ」を掲げることになりました。それは、以下のCESの一番最初の一般向けの基調講演の冒頭、CESを主催するCTA(Consumer Technology Association)のプレジデント兼CEOのゲイリー・シャピロ(Gary Shapiro)氏から語られた、以下のようなものです:And that theme is focused on what technology can do to make the world better. In fact, we're partnering with the United Nations' Trunst Fund for Human Security and the world Academy of Art and Science to support a campaign called the Human Security for All Campaign.
And what that does is it shows how tech innovations can protect human securities, or as we actually call them, human rights. Think about it. What kind of human securities or rights should there be? And the ones that are there, that they've recognized and we're promoting, and fundamental to just basic existence as humans. Clean air and clean water, food, the right not to be hungry, healthcare, everyone should be entitled to healthcare, community engagement, political involvement. These are things which the United Nations and others have identified as saying these are basic human securities or rights. And the great thing about them is technology can play a difference in making that happen.
そして、そのテーマは、世界をより良くするためにテクノロジーができることに焦点をあてています。 実際、私たちは国連の「人間の安全保障のためのトランスト基金」や「世界芸術科学アカデミー」と提携し、「万人のための人間の安全保障キャンペーン」と呼ばれるキャンペーンを支援しています。
このキャンペーンでは、技術革新によって人間の安全保障、あるいは私たちが実際に人権と呼んでいるものをどのように保護できるかを示しています。 考えてみてください。人間の安全保障や権利とは、どのようなものでしょうか。 人間としての基本的な存在に必要なものです。 きれいな空気と水、食料、飢えない権利、医療、地域社会への参加、政治的関与などです。これらは、国連などが「基本的人権」と認定しているものです。 そして、これらの素晴らしい点は、テクノロジーがその実現に一役買うことができるということです。

この背景には、明らかに、コロナ禍、ロシアによるウクライナ侵攻、自然災害などなど、ここ数年、私たちが直面してきた「人間の安全」を脅かすような危機があるでしょう。
そして、最新テクノロジーやイノベーションというものは、なんやかんや、いろいろなものが出てきますが、結局、『人間』にとってどれだけ役立つのか?ということが、その重要性や必要性、あるいは将来性などを考える際のカギになる、ということなのでしょう?
そのことにCTAは、今年のCESで改めて気づいた、だからCES史上初めて、「人間の安全保障」という「人間」に軸を置いたテーマを掲げたのかも? 技術そのものじゃなくて。
あと、もう1つ付け加えると、このCTAのテーマは、マズローの五段階欲求説で言うところの、最も低い段階、つまり、生存に関する欲求に対応していて、後ほど特集するソニーが掲げた「人間を感動させること」は、マズローの五段階欲求説で言うところの、最も高い段階やそれに近い段階の欲求に対応している気がします。
〔ご参考〕
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