
昨年、コロナ禍のため開催中止になり、今年、2年ぶりにニューヨークに帰ってきたということで、より正しく状況を判断・分析するため、前回に続いて、北米最大規模のコミックやアニメ(その他、ゲーム、ヴォーカロイドほか日本文化の影響の色濃いポップカルチャー全般)のお祭り、NYコミコン(New York Comic Con、略してNYCC、日本語ではNYコミコン)を訪れる前に、関連情報を見てまいりましょう。
前回の最後に少し触れましたが、冒頭の円グラフは、最新の調査の結果、アメリカでは、今、外国語のコンテンツ(アニメに限りません)の中で、日本語の番組が最も高いという結果を示すもの。
以下のようなニュースになっておりまして:
その中で:
New Worlds: Japanese shows draw most demand among foreign content in U.S.新しい世界:日本の番組は、米国の外国のコンテンツの中で最も需要が大きい
…と報じられてます。
近年、米国では、スペイン語を母国語とする南米系の人々の移民が増えておりまして、直近データでは、米国市民の4,100万人(米総人口の13.4%)が、スペイン語を家庭で話しているとのことですが、そんなスペイン語よりも、日本語のコンテンツの方が需要が大きい、求める人が多いというのは、驚くべき結果と言えるでしょう。
ご覧のとおり、米国では様々な言語が話されているのですが、日本語は極めて少数。それにも関わらず、現在、日本語のコンテンツ(アニメに限りません)への需要が大きい、求める人が多い、と言うののです。
こんな事実、たぶん、日本国内の日本人の皆さんは、あまりご存知ないのではないでしょうか?
また、上述の記事の中には:
U.S. viewers’ interest in Japanese anime and live-action content has soared in past year, according to a report, as foreign shows find more demand from audiences amid the Covid-19 pandemic.
Interest in anime programs gauged from audiences’ behavior online was up 33% in the first quarter from just a year ago in the U.S., according to a report by Los Angeles-based Parrot Analytics(https://www.parrotanalytics.com/), a startup that measures audience demand for television content shown on the internet, and market research company Global Connects(https://www.globalconnects.media/).
調査レポートによると、米国の視聴者の日本のアニメや実写コンテンツへの関心は、新型コロナウィルスのパンデミックの中(巣ごもりリモート生活の徹底などの影響で)、視聴者からの需要が高まって、この1年で急上昇しました。
ロサンゼルスを拠点とするParrotAnalytics(https://www.parrotanalytics.com/)やインターネット上に表示されるテレビ・コンテンツに対する視聴者の需要を測定するスタートアップ、および市場調査会社Global Connects(https://www.globalconnects.media/)の調査レポートによると、オンラインでの視聴者の行動から測定されたアニメ番組への関心は、米国では1年前から33%も増加。
(中略)
Parrot said its analysis of audience interest took into account consumer interaction with television content online, using data such such as open streaming platforms, search engine queries and social media interactions.
ちなみに、ParrotAnalyticsによると、視聴者の関心の分析は、オープン・ストリーミング・プラットフォーム、検索エンジン・クエリ、ソーシャル・メディアの相互作用などのデータを使用し、さらにオンラインのテレビ・コンテンツとの消費者の相互作用を考慮に加えて算出したもの、とのこと。
…というようなデータのほか:
Demand for live-action Japanese shows is being fueled by people looking for more programming after becoming familiar with anime, the report said. Taiki Sakurai, Netflix’s chief anime producer, said in an interview in March that half of the company’s global subscribers had watched at least one anime title -- and it plans to release 40 more this year.
この調査レポートによると、実写の日本の番組の需要は、アニメに慣れた後、より多くの番組を探している人々(特に、オンライン・ストリーミング・サービスを利用する視聴者)によって活気づけられている、とのこと。 Netflixのチーフ・アニメ・プロデューサーである櫻井大樹氏は3月のインタビューで、同社の全世界の加入者の半数が、少なくとも1つのアニメタイトルを視聴したと述べ、今年はさらに40本をリリースする予定。
などと、アニメに限らず、実写の日本の番組への需要が高まっている背景についての興味深い考察も…。うーむ。
コロナ禍の間、アメリカで日本のコンテンツに対する需要が高まっているなんて、本当なのかな?と疑問に思いまして、関連情報がないか調べてみたら、やはり、その手の記事が出てるのです。
例えば、こんな感じ:
その中でも特に気になるのが、以下の内容。ちょっと長めですが、いろいろと重要そうなので取り上げておきます:
"Anime is the gateway drug to Japanese culture for many Americans," said Douglas Montgomery, CEO of Global Connects and a former executive at WarnerMedia. "Any way you slice it, the box office and TV demand data show a growing appetite for Japanese content with American audiences, with plenty of room to run."
American viewers have a growing appetite for stories from around the globe. South Korean films and dramas have swept U.S. audiences off their feet, most notably Oscar-winner "Parasite." The numbers, however, indicate that Japanese films have quietly come out on top, according to the Global Connects and Parrot Analytics report.
In 2019, Japanese films recorded over $33 million in total box office revenue, edging out South Korea's $31 million. The anime movie "Dragon Ball Super: Broly" alone raked in over $30 million. English-language remakes of Japanese properties also did well at the box office, including "Pokemon: Detective Pikachu," "Godzilla: King of Monsters" and "Alita: Battle Angel."
In April, the anime film "Demon Slayer the Movie: Mugen Train," based on a popular manga series, made a splash in the U.S., raking in roughly $21.1 million in its opening weekend. The feature film broke the country's box office record for biggest foreign-language debut, according to distributors Funimation and Aniplex of America.
"Japanese content has been a slow burn in the U.S. for 50 years. A lot of it has been remade, and the ideas came from Japan," said Montgomery of Global Connects, citing the "Transformers" series, which was originally a Japanese property. "What's interesting is that [the demand] is becoming more of a native content as opposed to the remakes."
Films are not the only Japanese entertainment pulling in American viewers. The most in-demand non-English language content in the U.S. is Japanese, even though Spanish is the second most-spoken language in America, according to Parrot Analytics. Over the past six quarters, series originally in Japanese consistently accounted for roughly one-third of the total demand for non-English series. The company's measurement of demand includes not only video consumption but also online activity such as social media engagement and searches for a particular show.
「アニメは多くのアメリカ人にとって日本文化へのゲートウェイ・ドラッグです」と、グローバル・コネクト社CEOでワーナー・メディアの元エグゼクティブであるダグラス・モンゴメリー(Douglas Montgomery)は述べている。 また、「どのようにスライスしても(=どこから分析してみても)、映画の興行収入とテレビの需要データは、日本のコンテンツに対するアメリカの視聴者の欲求が高まっていることを示しており、日本のコンテンツを供給する余地は十分にあります。」とのこと。
(※訳者補足:Netflixのようなオンライン・ストリーミング・サービスが爆発的に世界規模で普及した結果)世界中の物語に対して、アメリカの視聴者の欲求は高まっています。(その証拠に、近年、米国では) 韓国の映画やドラマが米国の観客を席巻し、特に、アカデミー賞でオスカーを受賞した韓国映画『パラサイト』は有名です。ただし、Global Connects and Parrot Analyticsの調査レポートによると、(実際に興行成績の)数字を見てみると、(韓国映画よりも)日本の映画の方が、静かにトップに立っていることを示しています。
※訳者補足:「静かにトップに立っている」(…have quietly come out on top,)という表現が、長い歳月をかけ米国でじわじわ人気を得てきた日本のコンテンツの「積み上げてきた感」をとてもよく表している気がします。
(パラサイトが注目を集めた)2019年の韓国映画の米国での売上は3,100万ドルだったが、日本映画はそれを上回る3,300万ドル。特に、アニメ映画の『ドラゴンボール・スーパー:ブロリー』は、それだけで3,000万ドルを超える興行成績を叩き出した。その他、もともと日本で生まれた作品の英語版リメイク作品、例えば、『ポケモン:探偵ピカチュウ』、『ゴジラ:モンスターの王』、『アリタ:戦いの天使』などの興行成績も上々。
4月(※訳者補足:『鬼滅の刃 無限列車編』Demon Slayer: Mugen Train、2020は、2021年4月23日米国公開)、アニメ映画の『鬼滅の刃:無限列車編』が、米国でヒット。公開初週末だけで2,110万ドルを売り上げた。なお、 配給元のFunimationとAniplex of Americaによると、これは、外国語映画作品の初週売上の史上最高記録を塗り替える偉業、とのこと。
※訳者補足:詳しくは過去ログ『映画『鬼滅の刃:無限列車編』(Demon Slayer: Mugen Train)全米興行収入ランキング1位へ』参照
「日本のコンテンツは、米国では50年もの間、ゆっくり燃えていた(生煮えだった)。多くの作品が米国でリメイクされたが、もともとのアイデアは日本からきたものだった。例えば、トランスフォーマー・シリーズなどだ。しかし、今、興味深いのは、米国内での日本のコンテンツに対する需要は、リメイク作品よりも、ますますオリジナルのネイティブ作品に向けられるようになってきていること。」と市場調査会社グローバル・コネクトのモンゴメリー氏は述べている。
米国人の視聴者たちの興味をひいているのは、映画だけではない。Parrot Analyticsによると、現在、米国では、もっとも需要のある「英語ではないコンテンツ」は、日本語のコンテンツなのだ。なんと、(近年、米国内で人口の増えている南米出身者が母国語とする)スペイン語よりも、日本語の方が人気だという。過去、日本語は、6四半期以上もの間、英語以外の言語のコンテンツの需要全体の約三分の一もの需要を維持している。なお、この需要には、ビデオの消費だけでなく、オンライン上の活動、例えば、ソーシャルメディアのエンゲージメントや、特定のショーに対するサーチ量などが含まれている。
はい、まただいぶ長くなりましたので、今回はここまで。
一応、ざっとまとめてみますと、前回からお伝えしているとり、Netflixほか各種オンライン・ストリーミング・サービスを含む、デジタル・トランスフォーメーションの急速な普及と進化など、コロナ禍によるライフスタイルの変化もありまして、日本のアニメは、現在、世界的な規模で人気を獲得中。その結果、これまでのニッチ市場向けではなくマス向け、メインストリーム向けのコンテンツへと、「大アニメ時代」へと飛躍しつつあります。
そして、そんな日本アニメがゲートウェイ・ドラッグのような役割を果たし、現在、米国では、実写映画やドラマなども含めた日本語コンテンツへの需要が高まっている状況(しかも、外国語コンテンツの中で最も需要が高い)、とのこと。
また、この状況は一過性ではなく、か各種オンライン・ストリーミング・サービスの急速な普及と進化により継続する…どころの話じゃなくってですね、世界規模でさらに日本のコンテンツに対する需要を掘り起こしてくれそうな勢いかも?
そうですね、どのくらいオンライン・ストリーミング・サービスが急速に普及してるのか、次回、ちょっと見ておきましょう。
〔ご参考〕
【NYコミコン2021特集】
■日本の番組は、米国の外国コンテンツの中で最も需要がある⁉
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