たった1マイル(1.6km)だけのマラソン大会(
New Balance 5th Avenue Mile)、乳がん撲滅のためのマラソン大会(
Race for the Cure)に続いて、今月24日(日)、ニューヨークで、毎年、大きな注目を集めるマラソン&ウォーキング大会が開催されます。その名は
『The Tunnel to Towers 5K Run & Walk in New York』。
直訳すると
『ニューヨークでトンネルからタワーへ5キロのマラソン&ウォーキング』。これだけでピンときた方は、かなりのNY通。
「よく分からないよ」という多くの方々のために、とある一人のヒーローのお話をしましょう。
彼の名前は、スティーブン・シラー(Stephen Siller)さん。7人兄弟の末っ子に生まれ、8歳で父親を亡くし、その1年後に母親も他界したため年上の兄姉に育てられました。
両親のいない、貧しく、苦しい生活でしたが、兄姉の愛情によって立派な青年に育ったスティーブン君は、消防士の道へ・・・。苦難を乗り越え立派な大人に育った彼は、困っている人や苦しんでいる人々の気持ちや痛みを、他の人よりもきっとよく理解できたのでしょう。また、
兄姉に支えられ助けられてきた分、「今度は自分が他の人々を助けよう」という思いが強かったのかもしれません。
だから、あの日、2001年9月11日、ブルックリンの第一消防隊(Brooklyn’s Squad 1)で夜勤が終わり、これから兄弟たちと楽しい休暇を過ごそうと移動中だったスティーブンさんは、ワールド・トレード・センターに飛行機が突っ込んだとの一報を聞いて、すぐに消防署へ戻ったのです。
これからお休みだったのに・・・。
しかも、ただ消防署に戻っただけじゃないんです。消防署に戻った彼は、防火服を着て30Kgほどの機材を背負い、自分が乗ってきたトラックでブルックリン・バッテリー・トンネル(the Brooklyn Battery Tunnel)へ。なお、ブルックリン第一消防隊は、ワールド・トレード・センターまでイースト・リバーを超えてすぐ(普通車両で30分ほど)。
ところが、この日、トンネルはセキュリティ上の理由から既に閉鎖。まぁ、ワールド・トレード・センターに飛行機突っ込んでますから、そりゃそうですよね。
当然、周囲は渋滞。トンネル前まで行ってもその先には行けません。しかも、防火服を着て30Kgほどの重たい機材を背負ったまま。・・・と言うか、そもそも夜勤明けでオフの予定だったんです。
もし、皆さんが、そんな状況に直面したら、どうします? 申し訳ないけど、現場に駆けつけるのは諦めちゃうという方が大多数じゃないでしょうか。
でも、スティーブンさんは助けに行くんですよ。
車から降りて、走って。もちろん、防火服を着て30Kgほどの重たい機材を背負ったまま。そして、あの地獄のような現場にたどり着き、他の人々の命を助ける一方で、自らは34歳の若さでこの世を去りました。素晴らしい奥さん、5人の育ち盛りの子ども達、親代わりでもある兄弟、多くの友人たちを残して・・・。
まるで映画やドラマのようなお話ですが、実話です。
そして、この実話は、ここで終わりません。残された遺族や友人、スティーブンさんの生きざまに心を揺さぶられた方々などが集まって、さらにドラマチックな展開に。
そう、困っている方々を助けるためのNPO団体(Stephen Siller Tunnel To Towers Foundation)を立ち上げ、啓蒙活動や資金集めの一環として、
あの日、スティーブンさんが走ったトンネルからWTCタワーへの5キロをコースにしたマラソン&ウォーキング大会をはじめたのです。2002年に1500名ではじまったこのイベントは、5キロのマラソン&ウォーキング大会としては全米最大規模に成長。
さすが、スティーブンさんのご遺族の方々。ただ悲しんで終わらせません。たとえ悲しみのどん底にいても希望を描く、きっと、そういう方々なのでしょう。なお、この過程については『
For the Love of Their Brother』というドキュメンタリー映画にもなってます。
長くなりましたが、最後に公式PR動画『2016 Tunnel to Towers Run』(昨年2106年の様子をまとめた動画)など、以下、ご参考まで。
スティーブンさんの想いは、こうして今も受け継がれ・・・
2016 Tunnel to Towers Run〔ご参考〕
・
https://tunnel2towers.org/:公式
~マラソンお申し込みは
こちらから
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