「ストリート・ファッション写真というジャンルの生みの親」、「生きるファッション文化史」、「生きるニューヨーク名所」(実際に2009年に
公式のliving landmarkにも選出)などと呼ばれ、2010年には
ドキュメンタリー映画も公開された写真家、ビル・カニンガム(Bill Cunningham)さん。1928年(昭和3年)生まれ。1週間ほど前、脳卒中で
入院中と報じられたばかりですが、25日、87歳で天国へと旅立ちました。
ファッション業界で影響力を持つ人々は、無料の航空券、洋服、ホテルなどをいくらでも提供され、運転手つきの黒塗りの車で移動した時代から、撮りたい写真を撮るためにジャーナリストとしての禁欲を貫き続け、彼はいつでも自転車移動。
どんな豪華なパーティにも、いつも同じブルーのフレンチ・ワークマンズ・ジャケット姿で訪れて、シャンパン一杯口にすることはなかったそうです。
そして、雨の日も、雪の日も、寒さや風にも負けず、ニューヨークの街角(5番街の57丁目の街頭がお決まりの場所でした)に立ち、とてつもない量の写真を撮影し続け、それによって築き上げられたカニンガムさんならではの世界観が徐々に評価されて、彼は有名になりました。
決して、1枚の優れた写真で一躍有名になったのではありません。
そういう意味では、彼は優れたフォトグラファーと言うよりも優れたジャーナリストであり、思想家だったのかもしれません。シャイで照れ屋で、みんなのことを分け隔てなくずっと見続けてきた思想家です。
カニンガムさんと出会った方々の中には、彼が会話の中で、必ず「Chile」(Child、子どもの意味、ビートたけしさんの口癖の「あんちゃんよぉ・・・」みたいな感じ?)「Child」「Kid」と相手を呼びかけていた声が忘れられないという方も少なくありません。遠い昔、幼少期に大好きだった叔母や母親から、そう呼ばれていたことを思い出させて優しい気持ちにしてくれる、そんな人だったという方もいます。
彼をよく知る人々は、カニンガムさんの私利私欲に動かされない清く正しい心や、いつも勤勉で真面目で、著名人でも一般市民でも、性別や年齢や人種の分け隔てなく接し続けてきたその生き方に、深い感銘を受けたと、
それぞれ、
口々に語っています。
カニンガムさんはちゃんとみんなを見ていました。
まだ人種差別意識が強かった時代に、黒人の方々の美しさを写真を通じ表現したのも彼でした。
ニューヨークで開催される、ごく限られた取材しか受け付けない、ファッション関連の特別なイベントや最も珍しく素晴らしいパーティや集会の写真を撮影してきた写真家としても有名ですが、実は、あまり注目されていない無名のギャラリーのオープニングや、まだ広く世間に認知されていない慈善活動への寄付を募る小さなパーティなどにも足を運び、写真を通じてその意義や意味を世間の人々に示し続けてきたのもカニンガムさんでした。
「何かに興味を持ち行動する人々は、それが誰であっても彼ら自身が興味深い」ということを、みんなに教えてくれました。
慌しい生活の中で見過ごしがちな「平凡な日常の中にある美しさ」や「喜び」や、このニューヨークという街の持つ「多様性の魅力」を教えてくれたくれたのも彼でした。
私たちが人生を生きていくうえで、決して忘れてはならない多くのことをカニンガムさんが教えてくれたと言ってもいいくらいなのかもしれません。
その遺志は多くのニューヨーカーの心の奥に深く刻まれ、これからもしっかりと引き継がれていくことでしょう。心よりご冥福をお祈りします。どうもありがとうございました。
以下、ビル・カニンガムさんを偲んで・・・。
いつもブルーのフレンチ・ワークマンズ・ジャケット姿で自転車移動
著名人でも一般市民でも、
性別や年齢や人種の分け隔てなく・・・人々と向き合い
真面目で勤勉で清廉潔白
街角のトレンドを伝え
平凡な日常の中にある美しさや喜びを伝え人々を愛し愛され
多様性の魅力を伝え「何かに興味を持ち行動する人々は、
それが誰であっても彼ら自身が興味深い」
と、みんなに教えてくれました〔関連過去ログ〕
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NYのストリート・ファッションを撮り続けて50年!? 伝説の写真家、ビル・カニンガムさんの映画公開へ
カニンガムさんをよく知る方々の中には、結構いい歳したおじさんでも、カニンガムさんに「Chile」(Child、子どもの意味)と呼びかけられた時の声が忘れられないと語ってたりします。カニンガムさんが私たちに教えてくれたことは山ほどあって、いくらでも語れるはずなのに、「Chile」が忘れられないんだよーと語らずにはいられないってのは、やっぱり、それだけカニンガムさんのお人柄がとんでもなく素晴らしかったということなのでしょう。
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