『1997年の神戸連続児童殺傷事件の加害男性による手記が出版されたことで、米ニューヨーク州の「サムの息子法」と呼ばれる法律が注目されて・・・』とのことで、7/7までYahoo Japanでは、
加害者が犯罪行為をもとに収入を得られないようにする「サムの息子法」を日本でも導入すべきか?との
意識調査を実施中。現在、「導入すべき」が圧倒的ってことで、ちょっと考えてみましょう。せっかくなので、その「サムの息子法」の一部原文でも見ながら・・・。
でも、まぁ、考えるも何もそもそも犯罪者が、その犯罪行為をネタにして利益(
報道によると、現時点でも今回の手記による加害男性の印税収入は2000万円以上)を得られる状況を世の中に放置してたら、他にも、後々、本など出してお金になりそうな犯罪を助長しかねませんからね。
要するに、そんなワケで「言論の自由」を世界一厳守するNY州でも約40年も前の1977年、
N.Y. Executive Law § 632-a、別名「サムの息子法」(Son of Sam law)登場。
その後、米国内の約40州と連邦政府で類似の法律(
Victims of Crime Act of 1984、略してVOCA)が施行。
本家NYの「サムの息子法」は、これまでに何度も改善・改良されてきました。
例えば、当初、「犯罪加害者が自らの犯罪物語を出版・販売して利益を得ること」を阻止するだけだったのが、ドラマ化、映画化、講演会、インタビューを受けた際の謝礼などなどあらゆる行為へと適用範囲を拡大し、さらに、犯罪加害者本人だけに限らず、友人、隣人、家族、その他ありとあらゆる代理人に適用対象者も拡大。「言論の自由」を守るため、出版とか発言などの「行為そのもの」には制約を加えず(そのため出版社などは適用範囲外)、とにかく、
犯罪加害者やその関係者が犯罪行為をネタにお金儲けすることは絶対に許さないという方針。
たぶん、これなら日本国憲法でも合憲な気がしますけど、どうなのでしょう?
また、お金の流れの管理につきましては、犯罪加害者がその犯罪行為をもとに得たとみなされる全ての資金は、いったん公的機関の犯罪被害者救済委員会(he Crime Victims Compensation Board)の特別口座(いわゆるエスクロー・アカウント)に入金され、5年経たないと犯罪加害者側は触ることもできないというガッチガチの仕組み。一方、所定の条件を満たせば、被害者側はその間にいくらでも補償、賠償を追加請求可能。
あと、資金管理関連でもう1つ補足しますと、2001年の「サムの息子法」改正案の段階で、ひじょーに厳しいルールが加わってるそうです。
なんと、たとえ過去の犯罪行為をネタにして稼いだお金じゃなかったとしても、所定の条件を満たす犯罪行為者が、あらゆるすべての対象から(from virtually any source)受け取った資金が、累計1万ドル(1ドル=120円換算で120万円)をこえたら、必ず、被害者救済委員会に書面で報告するように義務づけてるんですよ(
N.Y. Corrections Law § 500-c)。徹底的に抜け道を封じる構え。
最後に以下、2012年の「サムの息子法」改正案に関連して、NY州議会上院議員のDean G. Skelosさんが"
SENATE PASSES BILL TO CLOSE LOOPHOLE IN “SON OF SAM” LAW"と題して書いた、ブログの一部とその和訳をご参考まで:
Allowing someone to profit from criminal activity is something that must not be tolerated in New York State. While the original ‘Son of Sam’ law has become the standard throughout most of our nation, we need to continually examine how we can improve it to protect the rights of all crime victims throughout our state.
誰かが犯罪活動から利益を得ることは、ニューヨーク州では許容されてはならないものです。もともとの「サムの息子法」は私たちの国の大部分でスタンダードになりましたが、私たちは、どうすればその内容を向上させ、NY州に住む全ての犯罪被害者の権利を保護できるか継続的に検討する必要があります。
本家NYの「サムの息子法」は、かれこれ40年近くも前からあって大分役立っていそうなのに、近年になっても、被害者ご本人やそのご家族のためにさらに向上させようってお考えの政治家さんがいらっしゃるんですね。
さて、ところで一方、日本の政治家の方々の声は・・・?
〔ご参考〕
・
「サムの息子法」を日本でも導入すべき? - Yahoo!ニュース 意識調査:実施期間:2015年6月17日~2015年7月7日
・
元少年A「絶歌」で波紋 犯罪の商業利用規制する米法律「サムの息子法」待望論[zakzak: 2015.06.24]
「サムの息子法、調べてみると実に興味深いです。1991年に最高裁で違憲判決が出た際、なんやかんやあって、出版だけを対象にしてたのが問題だった・・・ということで、その後、ドラマ化、映画化、講演会、インタビューを受けた際の謝礼などなどあらゆる行為へと適用範囲を拡大し(いわゆる倍返しですね)、その他微調整も加え、合憲にもっていくとか、ここまでの過程はなかなかドラマチックみたい。
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