
春のニューヨークでは、街角で
詩人さんや
詩の朗読会などによく遭遇する・・・とお伝えしましたが、もともとニューヨークでは日常的に「詩」をよく見かけるんです。上の写真は、地下鉄の車内で見かけたアメリカでは有名な詩人、Maya Angelouさんの「ニューヨークで目覚める」(
Awaking in New York)という詩。
電車の車内広告のスペースに、米国詩協会(
Poetry Society of America)やNYの地下鉄を運営する都市交通局(MTA)などが出してるものなんですけど、こういう感じの詩は日本の電車の車内じゃあまり見かけないですよね?
アメリカでは、歴史上、詩や小説などの文学作品がキッカケやシンボル的な存在となって、何かしらの社会現象や社会的な変革などを起こすことがありまして、特に「詩」に対しては、世間一般の人々の認識が日本とはずいぶん違うみたい。

ちなみに、アメリカの社会現象や社会的変革のキッカケやシンボル的な存在になった「詩集」を1つご参考までに挙げておきますと、アレン・ギンズバーグ(
Allen Ginsberg:1926 - 1997年)の『「吠える」と他の詩編』(
Howl and Other Poems:1956年)がひじょーに有名。映画も作られています。

第二次世界大戦後、1950年代のアメリカは世界一豊かな国、経済・文化の世界の中心となっていきました。でも、その一方で朝鮮戦争や、共産主義者を排除する「赤狩り」、いわゆるマッカーシー旋風も起こりました。
そんな中、当時のアメリカの若者たちは、物質的な豊かさを享受しながらも、なぜか心の中が満たされない感覚を感じるように・・・。
それ以前とは違う「何か新しい生き方」を模索しはじめた当時のアメリカの若者たちの前に現れたのが、アレン・ギンズバーグ、ジャック・ケルアック、ウィリアム・バロウズなどの『ビート・ジェネレーション』(Beat Generation、またはビートニック、Beatnik)と呼ばれる詩人や小説家たち。彼らは、物質的な豊かさばかりを優先し、均質化していく社会に違和感を感じ、「脱アメリカ」や「脱社会」といったメッセージをこめた詩や小説を発表することで社会への反抗を示し、当時の若者たちに熱狂的に支持されるようになったそうです。
また、『ビート・ジェネレーション』の影響は、アメリカ国内に留まらず1950~60年代の日本の若者たちにも及んでまして、当時の日本に、現在の日本のポップ・カルチャーの基礎や根源とも言えるヒッピー的なファッション(ミニスカート、パンタロン)や、フォークソング集会などの数々の文化的なブームをもたらしました。まぁ、実は、そのくらい詩や小説の影響力は大きいってことなんでしょうね。
以下、"Awaking in New York"の簡単な和訳などご参考まで。
"Awaking in New York" BY MAYA ANGELOU
Curtains forcing their will
against the wind,
children sleep,
exchanging dreams with
seraphim. The city
drags itself awake on
subway straps; and
I, an alarm, awake as a
rumor of war,
lie stretching into dawn,
unasked and unheeded.
カーテンは自らの意志で
風に抵抗し、
子どもは寝むっている、
天使と夢を交換しながら。
この街は地下鉄のつり革に
つかまって目を覚まし;
そして私は、目覚まし時計のように、
慌しく目覚めるが、
夜明けの中で寝転んでいる、
頼まれも請われもせずに。
〔ご参考〕
・
http://www.poets.org/poetsorg/poem/howl-parts-i-ii:Howl, Parts I & II
・
http://poeticparfait.com/2015/01/10/analysis-of-maya-angelou-awakening-in-new-york-poem/:Analysis of Maya Angelou’s Awaking in New York Poem
せっかくニューヨークに来ても、日米間の文化や価値観の違いのようなものは、薄っぺらい上辺や表面的なものばっかり見ていてもよく分かりません。下手すると、勝手な勘違いとかするだけです。やっぱり、背景にある歴史や、時代の流れや世の中の動きなどについてもり考えてみるようにすると、いろいろもっと理解できるようになって、発見や気づきも増え、ますます楽しくなると思います。
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