
グランド・ゼロ。週末、久しぶりに行ってまいりました。近くにあるのになかなか行く気持ちになれなくて、かれこれ1年ぶりくらいになります。今回は、観光旅行客で賑わっている正面からではなく、裏手にある
World Financial Centerの2階から静かに見つめることにしました。実は、911のすぐ後、私は本格的な留学のための下調べにちょうどニューヨークを訪れていたのです。ある日、どうしても気になって、グランド・ゼロのすぐ近くにある教会に行ってみることになりました。まだ、日本ではニューヨークへの渡航規制のようなものがあった頃です。
教会の垣根には、行方不明となった方々の消息を捜し求める無数のビラや写真、そして彼らに向けたメッセージ。小さな子どもたちを抱きかかえたお父さんや、ウェディングドレス姿の女性の写真。そのどれもが幸せいっぱいの笑顔のものでした。所狭しと友人、知人、ご遺族からの手紙や詩も添えられていました。
行方不明となった消防士の5歳のお嬢さんが書いた手紙には、「これからは何でも言うことを聞くし、いい子になるから、早く帰ってきて私を抱きしめて・・・。」
その場にいる誰もが泣いていました。いつもは騒がしい街がシーンと静まり返っていて、大声を出す人は誰もいません。私は泣きじゃくりながら、そこにあった殆どすべての手紙を1つ1つ読んでまわりました。言葉では言い表すことのできないほどの深い悲しみに包まれながら、ご遺族のために何か自分にできることがないかと考えたのですが、自分の無力さを感じただけでした。なかなかその場を立ち去ることができずに様々な思いを巡らせた結果、ここを私のニューヨーク生活のスタート地点にしようと決めました。

今ではグランド・ゼロ周辺はすっかり変わってしまって、あの頃の様子は微塵も感じさせません。何も知らない人が見たら普通の建設現場に見えるかもしれません。でも、私にとってこの場所は今でも特別な場所です。ここにどんな新しいビルが建っても、建たなくても、それはまったく関係ありません。あの日感じた気持ちを、私は一生忘れることはないでしょう。ここに来る度、あの時の気持ちが痛いほどよみがえってきます。とても辛い気持ちになるけど、亡くなられた方々の分まで精一杯生きようと自然に思えてくるのです。
グランド・ゼロは近くて遠い特別。相当気合を入れないと行けない場所です。久しぶりに行ってみたけど、やっぱり感じた気持ちは同じでした。ニューヨーク発のブログはたくさんありますが、グランド・ゼロを話題にあげる方は滅多にいません。多分、こちらにいる方はみんな同じような気持ちを持っているのではないでしょうか。
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