アート、ポップカルチャー、食文化等など様々なかたちで、日本や日本人に関する情報は外国へと伝わり、海外における「日本のイメージ」が形成されているワケですけど、こりゃまたスバラシイ情報を発見!!! 雑誌「ザ・ニューヨーカー」(The New Yorker)の最新号の記事なんですけど、コレ、自殺願望者の方々に生きる希望を与える日本の禅寺(岐阜県関市大禅寺)のお坊さんのお話なのです。
雑誌「ザ・ニューヨーカー」はクオリティの高いルポルタージュ、批評、エッセイなどで知られる一流誌。ディープな話題も数多く取り上げられてるんですけど、「生死」をテーマにして日本の禅僧が登場とは・・・。すごい。
以下、その一部をご参考まで:
大禅寺の住職、根本紹徹(ねもと いってつ)さんは、長年、自殺問題に取組んでまして、相談に訪れた自殺願望者の方々向けにお寺で、「死のワークショップ」(death Workshop)を開催しています。
様々な理由から「もう死んでしまおうか・・・」と絶望し苦しんでいる方々を相手に、根本さんは、こう問いかけます。
「あなたが、あと3ヶ月しか生きられないという末期ガンの告知を受ける姿を想像してみてください。その限られたたった3ヶ月の間に、あなたは何をしたいのかできるだけ多く紙に書き出してみてください」
彼はこう続けます。
「それでは、残り1ヶ月しか生きられない時はいかがですか?」
「では、あと1週間だったら?」
「あと10分しかなかったら?」
このワークショップを体験した多くの参加者が、限られた命や生きる意義に気づかされ涙を流します。参加者だけではありません。彼らと真剣に、心から真剣に向きあう根本さんも彼らと涙ながらに対話を続けるそうです。
そんなある日、長年にわたり死にたいと根本さんに相談していた自殺願望者の男性が、このワークショップにはじめて参加しました。彼は38歳。この10年ほどの間、精神病院に入退院を繰り返していたという方です。ワークショップがはじまり、「余命3ヶ月の間に何をしたいか紙に書いて下さい」と告げられた彼は、ただそこに座り、泣いていました。紙はまったくの白紙です。根本さんが声をかけると、彼はこう答えました。
「何も書きたいことがないのです。なぜなら、これまで自分が死ぬ前に何をしたいかなんて考えたことがなかったから・・・」
この男性がこれまで考えていたことは、ただ「死にたい」ということでした。彼は、今までに一度も自分の人生で何をしたいのか真剣に考えたことがなかったと言うのです。
でも、もし彼がこれまで本当に自分の人生を生きたことがないのなら、なぜ死にたいと思えるのでしょう?
But if he had never really lived, how could he want to die?
この経験を通じて男性は気づきました。工場の機械製作工としての仕事に復帰し、かつて誰とも話をしなかった人見知りだったのが今ではまわりの人々と会話できるようになり、そして、職場で出世するほどに・・・。
・・・とまぁ、こんな感じの意味深い、すべての人々にとって重要なテーマの記事でして、だからタイトルが”
Last Call”(最後の砦)。うーむ。
近年、アメリカでは、アップルやピクサーの創業者のあの
故スティーブ・ジョブズさんが大学生時代に日本人の禅僧(乙川 弘文さん)のもとで修行したことが広く知られ、日本文化や日本人に対する関心や敬意の源にもなってます。この「ザ・ニューヨーカー」の記事でも、一昔前なら日本の禅寺のお坊さんじゃなくて、キリスト教の教会の神父さんのお言葉だったんじゃないかなと思いますが、これも時代の変化による影響かもしれません。そういう意味では、アメリカにおける今の時代の「日本のイメージ」を象徴している貴重な記事と言えるでしょう。興味深いです。
〔ご参考〕
・
LAST CALLA Buddhist monk confronts Japan’s suicide culture[JUNE 24, 201]:元記事
・
自殺問題に取組む、根本紹徹のブログ:根本さんのブログ
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