「アメリカ進出は大企業じゃなきゃムズカシイ・・・」という皆さんに勇気が沸いてくる話題を1つ。茨城の地ビール「常陸野ネスト」をご存知ですか? 1823年創業の
木内酒造(Kiuchi Brewery)が1996年頃から新たに作り始めたビール。アサヒ、サントリー、サッポロ、キリンの4大ブランドが強過ぎる日本では、地方の小さな酒蔵が市場に入りこむのは至難の業。でもアメリカ、特に
「多様性の街」と呼ばれるニューヨークじゃぜんぜん別の話・・・。
ホワイトエールが、2000年にニューヨークで開催された
ワールド・ビア・カップ(World Beer Cup)で金メダルを獲得したことがブレークのきっかけ。
その後、英国で1886年から続く世界最古で最高峰のビール国際品評会、
The Brewing Industry International Awardsでも2002年に金メダル及び部門総合チャンピオンに輝き、2004年のワールド・ビア・カップでも再び金メダル。その他、怒涛の
受賞暦。
多くの人々の口にあうような(=大企業が得意のマス・マーケット狙い)ビールではなく、作り手の顔が見えるような独特の個性際立つ(=ニッチ・マーケット狙い)クラフト・ビール愛好家が多く、しかもさらに年々増えてるニューヨークでは、「Hitachino Nest」の評判と人気は、可愛いフクロウのロゴマークとともにすっかり定着。今では、クラフト・ビール専門店はもちろん、高級レストランから街角のスーパーでも取り扱われ、
「Hitachino Nest」ネイルアートを披露する女の子も(笑)。
そしてさらに、こんな感動的な出来事まで・・・。
2011年3月11日に発生した東日本大震災は茨城県那珂市にある木内酒造にも甚大な被害を・・・。その復旧費用は地方の決して大きくない酒蔵さんには重く辛い負担となります。
そこでニューヨークのビール・ブリュワリーの方々が結集!!!
「こんな素晴らしいビールをなくすわけにはいかない・・・」と、日頃、木内酒造と同じく小規模ながらも地道に頑張っている彼らは、遠い日本にいる仲間を救うために立ち上がりました。
震災からわずか17日後の3月28日、ニューヨーク州のビール連盟に加盟しているビール会社6社(ブルックリン・ブリュワリー、ハートランド、ケルソ、シックスポイント、エンパイヤー、ラグニタス)と、グッド・ビア・シール、ビール・セッション・ラジオなどが、木内酒造のためのチャリティー・イベント、
Brewers For Brewersを
ブルックリン・ブリュワリーで開催。その全ての収益(12,000ドル超)を復興に立ち向かう木内酒造に寄付したのです!!!
まるで映画やドラマのような、でも実話です。この一例だけでも、日本の
人口わずか5万人ほどの地方都市にある決して大きくはない木内酒造が、今、ニューヨークでどれほど愛されているか本当によく分かるでしょう。あと、競合が減って良いとは考えないのも、昨今のニューヨークらしくて興味深いです。
マス・マーケット狙いになりがちな大企業よりもむしろ、大企業が手をつけにくいニッチ・マーケットで輝く個性をすくすくと伸ばし、消費者はもちろん同業者の心までつかんでしまう中小企業の方が、アメリカ、特に、ニューヨークでは成功する可能性が高いのかもしれません。多様な民族と人種が集うニューヨークでは、ビールに限らずあらゆるものについて消費者の嗜好も多様。この街について知ればしるほどその魅力を感じることでしょう。
多種多様なクラフト・ビールが並ぶニューヨークのスーパーつい最近、9/19付NPRでも特集記事(音声つき)〔ご参考〕
・
www.kodawari.cc:木内酒造公式サイト
・
BREWERS FOR BREWERS: EARTHQUAKE RELIEF:ブルックリン・ブリュワリー公式ブログのチャリティー・イベントの記事[2011/3/29]
・
Japanese Sake Makers Shake Off Tradition, Try Brewing Craft Beer:NPRの木内酒造特集[2012/9/19]
・
茨城の地ビール「常陸野ネスト」が全米で売れるワケ:日経トレンディも特集[2012/8/9]
英語にも、「まさかの友こそ真の友」("A friend in need is a friend indeed")という諺があります。 困った時に助けてくれる友こそ真の友であり、逆境にあるときにこそ真の友情がわかる・・・という意味。木内酒造がニューヨークで手に入れたのは、新たな販路や市場だけでなく、言葉や文化の壁を越えた、真の友でした。
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