
どうやら日本の有識者にも、国会にも、アメリカの現状がちゃんと伝わってないみたいで、6月20日、違法ダウンロードへの刑事罰導入を盛り込んだ著作権法改正案が日本の参議院で可決されてしまいました。YouTubeやニコ動などでの再生時キャッシュも逮捕の理由になる危険性がある・・・とのこと。また、この法案の使い方によって日本のインターネットの発展が大きく阻害されてしまうかもしれません。
参議院での参考人質疑に参加した
岸 博幸さんの記事をダイアモンド・オンラインで拝読させて頂きましたが、アメリカに「ネット上には、コンテンツは無料か非常に廉価で当たり前という考え」が蔓延していたのは、一昔前の話じゃないかなと思います。

一番分かりやすいのが、ニューヨーク・タイムズ紙の有料電子購読プランの例。
2005年9月、ニューヨーク・タイムズ紙が、「タイム・セレクト」(TimesSelect)という有料電子購読プラン(月額7.95ドル、年間49.95ドル)をはじめて導入した際、アメリカ世論はこれに猛反発。ついに2007年に廃止されると、「
紙で儲けてるのだから無料で当然」という反応も・・・。
でも、2011年に改めて有料電子購読プランを導入したら、この1年間で爆発的に売れて、
以前お伝えしたとおり、ニューヨーク・タイムズ紙の発行部数は前年同期比で73%も増加。しかも、紙の新聞の発行部数(78万部)よりも電子版の購読者(81万人)の方が多くなってるのです。また、今回は、無料で当然なんて世論は殆ど皆無。わずか5年ほどでこんなに変わるものなのですね。
さらに、この現象はニューヨーク・タイムズに限ったものじゃありません。先日発表された
IHS iSuppli社レポートによると、この1年でアメリカの有料オンライン動画市場規模はなんと倍増!!!

原因はネットフリックス(Netflix)社。もともとNetflix社はインターネット上のレンタルDVD屋で、月額制の会費(最低月額7.99ドル~)を払うと、毎月一定数の現物のDVDを郵送により借りられ(返却も郵送)、オプション料金を上乗せした場合のみ映画をオンライン動画で見れるようになってたんですけど(月額約20ドル~)、2011年秋から月額7.99ドルで現物DVDレンタル抜きの有料動画配信プランを新たに導入すると、すでに2000万人いる会員のプラン変更(現物DVD→有料動画配信プラン)もあって、これがバカ売れ。
2010年まで、0.5%だったNetflix社の有料オンライン動画市場シェアは、2011年に44%へ1万倍以上も急拡大し、iTunesを持つ
Appleを抜いて業界トップに・・・。
Netflixにもともとあった有料動画配信オプションが市場シェア0.5%しか売れてなかったのに、こんなに急にバカ売れした背景には、2011年には、ニューヨーク・タイムズ紙の電子版が爆発的に売れたのと同様、ネットでも有料なものは有料という世論がすっかり定着してたということだと思います。
さらに加えて、ネット上のコンテンツではありませんが、”自由なネット利用”によってもたらされた「コンテンツ」制作者にとって素晴らしいニュースはまだあります。
以前お伝えしましたが、今年2012年に入って、コミック本やゲームなどの「コンテンツ」制作にネット時代ならではの革命的な出来事が起こりました。

2009年4月にニューヨークで生まれたクリエイターと支援者を結びつける新しいウェブサービス、キック・スターター(Kickstarter)で、コミック本の再印刷のため57,750ドル(1ドル80円換算で462万円)の寄付を募集したRich Burlewさんがわずか1ヶ月で集めた金額は、なんと125万ドル(同1億円)超に!!!
そして、アドベンチャー・ゲームの制作費とその過程のドキュメンタリー撮影のため40万ドル(1ドル80円換算で3200万円)を目標に掲げたDouble Fine Adventureプロジェクトは、336万ドル(同約2億7千万円)超を確保。
ここまでの金額のものはまだ出てませんが、キック・スターターでは、ミュージシャンの方々がCDを制作するためや、ライブを開くために募金をかけて成功し、地道にファンを増やしている例も多々あります。つまり、岸さんも必要だとお考えになられている
多様な価値観やビジネスモデルがすでにアメリカのインターネット上にはとっくに現れているのです。
・・・ですから、有識者や国会議員の方々がみんなで考えなきゃいけないのは、『違法ダウンロード刑罰化』ではなくて(それも大事なことだと思いますがその前に)、日本で上に挙げたアメリカのようなインターネットを有効に活用した事例がなかなか起こらない原因や、それを阻害する問題点じゃないかなと思いますけど、いかがでしょう?
〔関連過去ログ〕
・
日本でインターネットの活用事例がもっと増えますように・・・:インターネットの活用度に日米で差がある理由についての考察
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