

米国広告業界の専門情報誌、Adweekがブランディングの天才特集。Grand Brand Geniusとして、まず最初に登場したのは、GoogleのLorraine Twohillさん。2011年は爆発的に成長したAppleに抜かれたものの、2007年以降、常に安定した世界のトップとなっているGoogleブランドのグローバル・マーケティング責任者。

インタビューのコメントから、ユーザーの立場に立つどころか、自由にユーザーに遊ばせるという方針で、
ユーザーとの「信頼関係」をかなり重視してることが伺えます。
もちろん、昔からお客さんとの「信頼関係」は大切だったわけですので、たぶん、Twohillさんの意味するところは、インターネット時代の
「新しいコミュニケーション」における『新しい信頼関係』のこと・・・。そうそう、インターネットが普及して、誰でも手軽に入手できる情報量が激増した結果、アメリカでは2000年前後くらいから
「新しいコミュニケーション」のあり方への模索がずっと続いているのです。
どういうことか? ものすごく簡単に説明すると、インターネットが普及した結果、
「企業(政府、マスコミ、個人など)が説明する真実がみんなの真実とは限らない時代になった」ということです。仮に同じ「真実」でも状況や立場でその意味がまったく違ってしまうのが明らかになった。情報量の限られた昔だったら、専門家もオススメ!!!とか言えば簡単に信頼されてたようなことでも、今では、「賛成、反対、いろんな専門家がいて当たり前だし、反対の専門家は何て言ってるの?」とGoogleで検索されたりするのです。

1つだけ正しい答えがあるわけじゃない、ということが明確になった時代と言っても良いでしょう。
だから、いくら企業が商品やサービスの優れた機能や特長を時間とお金と労力をかけて力説しても、まったく説得できないか、ヘタすると逆に信頼を失う可能性もあるのです。
そんなわけで、アメリカでも最先端のマーケティング業界人を中心に、今では
「より重要なのは聞き手側の真実」という考え方が主流になってます。
具体的にいうと、
自分の主張の正しさを立証するよりも、お互いに相手の主張をサポートする自分の知ってる追加情報を示し(相手に賛成しなくてもいいです)たり、むしろ逆に自分の主張の弱点や問題点について相手の認識している情報の中から何か解決案がないかを聞くなどして、とにかく理解を深めあって、最終的にお互いにプラスになる道を一緒に探そう、というスタンス。これが、
「聞き手側の真実」をお互いに重視したコミュニケーション・スタイル。
これは、非常に合理的なコミュニケーション・スタイル。どんなに自分の主張にとらわれてる人でも、相手の主張をサポートする新しい情報を示すとかやっていったら、少しずつかもしれませんが相互理解は深まりますし、ざっくばらんに弱点や問題点について相手の意見を取り入れたりしていれば、もっと良いアイデアが生まれる可能性も高い、というわけ。

すでにいろんな成功事例もありますが、代表的なのは前回の大統領選挙のオバマさん。この選挙戦の中で、オバマさんは「わたしたち」(="We")を「わたし」(="I")の6倍も使ってた、つまり、「聞き手側の真実」を重視してたと指摘されてます。
当初圧倒的有利と言われていたにも関わらず、民主党の代表戦に敗れたヒラリーさんは真逆の比率だったのだとか。ヒラリーさん自分のことを語りすぎ・・・というわけ。まぁ、確かに一方、オバマさんのキーフーズは"Yes, we can"でしたね。
日本でも今、原発の存続、増税、TPP、大阪市長選など、いろいろ議論が盛んに行なわれている話題がありますけど、そういう場面でこの新しいコミュニケーションを取り入れてみたら良いんじゃないかなって気がします。
えーと、話がすっかり本題からそれましたが、Googleのブランディングでは、以上のような時代の変化のコンテキストを踏まえたうえで、ユーザーとの「信頼関係」を重視してるってことなのでしょう。「聞き手側の真実」を重視してるGoogleらしい例として、レディ・ガガさん出演のChromeのCM(制作期間はたったの2週間!?)を以下、つけときます。
上記の「聞き手側の真実」をふまえると鳥肌が立つクオリティ
曲の歌詞ともバッチリあってます
レディ・ガガさんのThe Edge of Gloryを歌う大量のファンが登場
近年のBrandZ Global Top 100ランキング上位の推移〔ご参考〕
・
http://www.adweek.com/news/technology/googles-twohill-named-grand-brand-genius-136128:Adweek記事
〔BrandZ Global Top 100ランキング〕
・
2011年レポート:最新版
・
2006~2010年の過去のレポート:アーカイブ
〔追記:関連ログ〕
・
Disney Surpriseバイラル・ビデオに見る米国最新マーケティング手法[2011-11-19]
なお、1990年代頃までのアメリカでは当たり前だった、自分の主張を押し通すための「議論に負けない法」的な発想は、インターネット時代のアメリカではとっくに死亡確定だそうです。大学のESSとか、英語のコミュニケーションについて勉強してる皆さんや教えている先生方、このコミュニケーションの変化は急速に進んでますので、最新のマーケティング関連書籍でご確認ください。
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