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「ウォール街を占拠せよ」デモ(Occupy Wall Street)。このデモがアメリカに何をもたらすのか? その答え、あるいはヒントになりそうなニュースを1つ。昨日、
「みんなで協力して何とかしよう!!! 仕事をつくろう!!!」というユニークな雇用創造プログラムが発表されました。その名も、"
Create Jobs for USA"。旗振り役は、なんと、あのスターバックス・コーヒーです。
全米にあるスタバで募金(5ドル以上から)を実施し、その全額を各地の「地域開発金融機関」(community development financial institutions、略してCDFIs)に供給するという内容。
CDFIsは、この寄付金を地元の中小企業、NPO団体、建設業者など各種コミュニティ・ビジネスへの融資資金に活用可能。また、スタバは募金するだけじゃなくて、5ドル寄付するとスタバが30ドル上乗せして35ドルの寄付になる仕組み。スバラシイ!!!
日本のバブル崩壊後、銀行から中小企業への貸し渋り、または貸しはがしが社会問題になりましたが、リーマンショック以降のアメリカでも同様の現象が少なからず見受けられ、昨今の失業率の高止まりの背景には、資金調達が困難になった中小企業の活動低迷があるとの指摘も出ています。これまた日本と同じく、これらの中小企業は地域経済で重要な役割りを果たしているのに、さぁ、困った。そこで、「みんなで協力して何とかしよう!!!」というわけ・・・。
でも、政府じゃなくて民間企業がそんなプログラムを立ち上げるなんて、すごいですよね。日本のバブル崩壊後に、そんな民間企業あったでしょうか? いやー、さすが、スターバックス。さすが、ハワード・シュルツ(Howard Schultz)さん。
今のスタバをたった一代で創り上げたハワード・シュルツさんは、ドイツ系ユダヤ人移民で、ニューヨークのブルックリンの貧民街生まれ。1953年生まれのまだ58歳。
奨学金を得て大学を卒業してますが、貧困家庭で低賃金労働者だったお父さんの姿を見て育った彼は、スターバックスを作った一番最初から、従業員たちの姿を自分の父と重ね合わせ、それまでの企業ではありえないほど充実した手厚い待遇を提供。
1991年にはこんな象徴的な出来事がありました。スタバの前身となるイル・ジオナール(IL Giornale)の2号店で1986年からお店の中心的存在として働いていた社員(Jim Kerriganさん)から、シュルツさんは「末期のエイズで、もうお店で働けません・・・」と告白を受けます。当時のスタバの健康保険にはエイズに関する項目はありません。普通の会社なら退職しておわりです。ところが、シュルツさんは、このもう働けませんという社員のために政府の保険プログラムが適用されるまで(通常29ヶ月)のの間、彼の医療費の全額を負担する新しい健康保険を導入したのです。今のスタバじゃありません。まだまだちっぽけな中小企業だった頃の話です。
Jimさんからエイズの告白を聞いたとき、シュルツさんは泣いて抱き合いました。
お金儲けのためにやってるんじゃない。スタバを愛するお客さんたちのために、社員や社員の家族のために、そして、みんなが暮らす地域コミュニティのために、シュルツさんはスタバを経営していると断言。その本気の想いが、たった一代でスタバをここまで大きくした原動力になっているのです。他にも詳しくシュルツさんの著書"
Pour your heart into it"に彼の想いは書いてありますが、目次の後の一番最初のページに書いてある、以下の4つの文章だけでもシュルツさんの考え方をうかがい知れるでしょう。
Care more than others
think wise.
Risk more than others
think safe.
Dream more than others
think practical.
Expect more than others
think possible.
うーむ。さすが日本人の価値観に極めて近いユダヤ系だけあってサムライ魂的なものを感じます。これをこのまま切り取って、震災被災地復興のスローガンにしてもいいんじゃないかってくらい、妙にしっくりくるから不思議。今回の"Create Jobs for USA"プログラムが立ち上げられた背景にも、こうしたシュルツさんの想いがあるのでしょう。肝心のプログラムは11月1日から、全米のスタバ店舗にてスタート。5ドル以上の寄付を受け付けてますが、5ドル寄付しただけでも特製リストバンド(米国製)がもらえます。
これがお店に並ぶのだとか
We are indivisibleWho can help? All of us.
〔ご参考〕
・
www.createjobsforusa.org:公式サイト
・
www.opportunityfinance.net/createjobsforusa:支援パートナーOFNの公式サイト
・
Create Jobs for USA:スタバ公式サイト
・
Pour Your Heart Into It: How Starbucks Built a Company One Cup at a Time:シュルツさん著書Amazonより
【Occupy Wall Street特集】
・
NYの「ウォール街を占拠せよ!」(Occupy Wall Street)デモとは?[2011-10-05]
・
そしてスタバが立ち上がった!!! Create Jobs for USA[2011-10-06]
・
あまりメディアが伝えないニューヨークのウォール街デモの素顔[2011-10-12]
抗議デモするのも、こういうプログラムを立ち上げるのも、どちらも自分たちが行動して何かを変えようという意識が強いからなのでしょうね。あと、シュルツさんの著書、"Put your heart into it"は、タイトルからしてそうなんですけど、素晴らしい英語表現が山ほどあるので日本語よりも英語で読んだ方が胸にグッとくると思います。
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