気になるニュースを1つ。11月22日、NYの不動産専門誌のThe Real Dealが「
マンハッタンの小売賃料が17年間で最低」(
Manhattan retail rents hit 17-year low)と報道。これは前日のNY Postによる「
マンハッタンの小売賃料が17年間で最悪のスランプ」(
Manhattan retail rents are in their worst slump in 17 years)を要約した内容で、同日発表された
REBNY Report Fall 2017を受けたもの。
REBNYとは、Real Estate Board of New York(ニューヨーク不動産組合)の略称。毎年、春と秋の年2回NY不動産市場に関するレポートを発行しておりまして、特に地元NYでは、それをもとにしたニュースが冒頭の事例のように多々報じられます。
また、今年2017年は、主にREBNYが発表した情報に従って「
小売賃料が2014年のピークから30%安くなった」(2017年5月 Commercial Observer)とか、「
小売賃料の低下が進んでいる」(10月 Bisnow)とか、さらに過激なところでは「
小売市場が再び回復することはないのかもしれないと専門家は語る」(10月 Crain's New York)というような悲観的な見出しのつけられた報道が相次いでおります。
でも、見出しは悲観的ですけど、冒頭の記事の緑字になってる”Some areas saw rent increases・・・”以下の部分などや、「
小売賃料の低下が進んでいる」(10月 Bisnow)の記事でも、最後の締めのパラブラフには:
"The Flatiron District could be perhaps the most stable retail corridor in the borough, as the stretch of Fifth Avenue between 14th and 23rd streets saw a 14.8% year-over-year increase in average asking rents. The neighborhood did not quite keep pace with the previous era's exploding retail rent growth, and as a result has not had nearly as far to fall."
というように、エリアによっては平均賃料が対前年比二桁増!!となる伸びを見せてるなど、めちゃめちゃ絶好調と言える情報も・・・。うーむ。まさにケース・バイ・ケースという印象。ちなみに、この間、アメリカ経済は絶好調で株価は史上最高値を更新し続けてます。
だから、
商業用不動産市場に限らず様々なNYの最新情報をある程度知らないと、何が起こっているのか非常に分かりにくい状況になってます。
でも、たぶん、1つハッキリ言えそうなのは、悲観的過ぎる報道は「大袈裟」ということ。とりあえず不動産業者の方々は「安いよ、安いよ、今なら安いよ!!」って言いたいのかもしれません。でも、長期的な視野から見ると、ニューヨーク、特にマンハッタン内の商業用不動産は、ニュースの見出しになってるほど、そんなに極端に値崩れすることはありません。
そういう意味では、これもマーケティング戦術の1つかも?
以下、ご参考まで。
REBNYの最新レポートの一部
このレポート、対前年比までのデータでしか語られてません。
不動産投資はその性質上、株や債券より長期の投資なので、
そもそものレポートの作り方からして、投資家向けや一般人向けではなく
不動産業者さんたちの営業ツールとして作られたと考えてよさそうです。
また、REBNYのレポートをもとにした報道も同様で
ニュースというよりも宣伝と受け止めた方がいいのかも?
「小売市場が再び回復することはないのかもしれないと専門家は語る」
(2017年10月 Crain's New York)に掲載されていた時系列グラフ
2001年から右肩上がりで伸び続け、調整局面に入った状況?
でも、ここから賃料が極端に下がるとは
考えにくい気がしますけど・・・
〔ご参考〕
・
https://www.rebny.com:rebny公式<
Fall 2017 Manhattan Retail Report>
【関連報道】
・Manhattan retail rents hit 17-year low[November 22, 2017 - Real Deal]
・Manhattan retail rents are in their worst slump in 17 years[November 21, 2017 - NY Post]
・Retail market may never recover, experts say[October 19, 2017 - Crain's New York]
・Manhattan Retail's Rent Decline Is Accelerating[October 17, 2017 -Bisnow]
・Retail Rents Drop Nearly 30 Percent Since 2014 Peak: Report[MAY 27, 2017 - Commercial Observer]
ちなみに、REBNYのレポートやそれをもとにした関連報道では、一切、まったく報じられていませんが、11月15日の報道によると、この半年間にNY市は88,838件の建設許可(construction permits)を発行し、2016年の過去最高記録を更新したそうです。そのうちいくつかの物件は、建物完成前に賃貸契約を結ぶプレリースを成立させてるでしょうから、その影響で、Retail Rentsが下がってるのかもしれません。まぁでも、全体のトレンドとしては、多少、横這いがつづいても、結局、長期的にみると右肩上がりが継続しそうな気がします。
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